Neach’s One Phrase

ニーチ観察日記→ニーチ報告日記です。

「私の天竺(My Blue Heaven)/大瀧詠一
昨日宅急便。『俺に似たひと/平川克美』(朝日文庫)。かねてより評判の高かった平川くんの同書が文庫化、解説を関川夏央さんが書いていると知って慣れないネット・オーダー。何度読んでも感じることは平川克美という人の文章の巧さで、とかく感傷的になったり、啓蒙的に感じられたりするこの手の記述を彼独特の優しい視点と細かい観察で文学の域にまで高めている点に改めて感心。自分の両親と過ごしたかつての時間や出来事等を思い出しながら読み、親と子の絆の意味をいろいろ感じさせてくれる一冊。
彼は震災の起きた直後、「ナイアガラ・デイ」にゲスト、その際、流した大瀧詠一さんの「私の天竺(マイ・ブルー・ヘブン)」に甚く感じ入ってくれ、その記述を第11章「青空」というタイトルで紹介。<「日暮れて辿るは、わが家の細道」というところを聞くと、俺も父親と歩いた銭湯帰りの光景を思い浮かべてしまう。不思議なことに、この歌は状況が悪ければ悪いほど身に染みるのである。>後年、平川くんは日本映画に関して大瀧さんといろいろやりとりをし、薫陶の一端を感じ,大瀧詠一さんと数回に亘る対談の場を持てたことを今は多幸感とともに噛みしめ。
平川克美という人の人となりを知る上でも、また介護という年配者の宿命のようなテーマを考える上でもこの本は長く人口に膾炙する一冊。