Neach’s One Phrase

ニーチ観察日記→ニーチ報告日記です。

月一度の休日だったので平川克美くんの『移行期的混乱』を熟読。これは面白い!思わず膝を打って。「抑制の効いた文体」(By内田樹)で綴られていて、やっぱりこの人は詩人上がりだなと思わせる美しい文章に感心。
意外だったのは統計データやグラフ資料を丹念に調べて載せており、一人よがりの自説に終わることのない説得力のある論拠を掲げていたこと。
第一に「有史以来の人口減少」期にさしかかった現在のことを「移行期的混乱」と捉え、何が問題なのかを提示、更に仮説ながらどうしたらこの混乱期を生き延びることができるかというソリューションもちゃんと述べているところに共感。
Neach風に要約すると、経済成長神話や格差社会の増大と言った負の要素に対し、それらを短期的なスパンで対処するのではなく、長い目でとらえ自分たちの生活様式の変化と同調させて対処していくという提案をしているように。「問題なのは、成長戦略がないことではなく、成長しなくてもやっていけるための戦略がないことが問題だ」と喝破。批判だけでない将来への展望を掲げて。
「この移行期的な混乱は現在を見つめ直すための必要な混乱であり、その後には歴史過程的な人口調整が終わり、破壊された労働倫理が復活し、定常状態に近い経済均衡がもたらされることになるだろう・・・そのときには、現在の価値一元的な競争原理が作ってきた時代のパラダイムとは別の、新しいパラダイムが形成されているはずである。・・・経済成長パラダイムからあたらしい時代のパラダイムへの移行期的混乱について、それがどれほどの厄災と効果をわたしたちにもたらすのか、そのことの意味を知る必要がある。なぜなら、この移行期的混乱の中にこそ、あたらしい時代のパラダイムを示唆する萌芽もまた宿っているからである。」
他にも同時代人として、同地方人として、同じ境遇の親をもった者として共感できるコメントが多く、最近になく興奮して読んだ書物、2日連続で勝手に宣伝。平川克美著『移行期的混乱』(筑摩書房刊、1,680円)よろしくお願いいたします。