Neach’s One Phrase

ニーチ観察日記→ニーチ報告日記です。

今日は長い文。渡辺勝さんのライブが久し振りに。その昔、はちみつぃぱいのメンバーとして、またアーリー・タイムス・ストングス・バンドとしても名を連ね、パセティンクな曲を得意とする孤高のシンガー=ソングライターという説明で分かってもらえる(か)。個人的には76年にビクター傘下のフライング・ドッグ・レーベルの第2弾として発表された『ぼくは白い雲』というソロ・アルバムから夢中になって聴くようになり、続く2枚目のソロ・アルバム『HELLO』の中に収録されていた「ぐんじょうの空」でその呪縛が決定的となった極私的シンガー。その勝さんが一昨年の12月以来2度目となるライブで内心ワクワク。オープニング・アクトを務めるtiny cowのメンバーに先きだってお一人で現れ、何も言わずにギターのチューニングをはじめるあたりは勝さんの性格を表しているように。あまり媚びない、マイ・ペースで淡々とした佇まいは却って魅力。キーボードに移ってからも終始静かな面持ち、簡単な音合わせだけ行って「オーケーです」と小さく合図するのみ。
やがてtiny cowの連中のリハの番となると所在なげにうろうろして、「ちょっと出てきます」と言い残してその場を立ち去って。
お客さんの入りもあまり芳しくなく、10分押しでスタート、tiny cowの演奏中に戻ってきて静かに聴き入る様がとても印象的。休憩後、勝さんの出番となりエレキ・ギターを調整しながらどことなく始まるともうそこは渡辺勝の世界となり、不思議な緊張感と張りつめた空間となり一気に違う領域。自分が観客の立場になって真剣に聴いていることは極く稀、この日は完全に聞き手となって勝さんのかき鳴らすギターの調べと絞り出すようなヴォーカルにのめり込んで。いつもならお客さんが少ないことが気になったりするのですが、この時ばかりはそんな思いも杞憂に思えてきてお客さんの数なんてどうでもいい、と思って聴いて。やがてお目当ての「ぐんじょうの空」のイントロが聴こえてきた時はマジで鳥肌が立つほど興奮。曲が終わって拍手する際、思わず訳も分からぬ奇声を発してしまったほど。まるで仙人のような風貌の勝さん、まさに神がかっているような進行。実はそんな思いはNeachだけではなく、会場の誰もが釘付けになって聴いている様子。アンコールの拍手も自然と続き、「えっ、やるの?」と軽く交わしてみたものの、定番となる「あなたの船」の出だし♪坂を登れば潮風が〜♪が聴こえてきた時はもう泣きたいくらいの感動。渡辺勝、客が居ようと居まいとそのパフォーマンスは変わりなく、やや女々しいなと思える歌詞ですが独特のメロディでneachの心をとらえて離さない稀有なシンガーをこれからもずっと見守っていこうと思って。