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現代劇の最高傑作と名高い『天国と地獄』のレビュ。この映画も一度観た覚え、ディーテイルは失念,またいろいろ発見。先ず誘拐される子役が小津映画によく出ている島津雅彦だった。主人公の権藤（三船敏郎）の息子役はあのフォー・リーブスの江木俊夫というのは覚えていた。印象に残った脇役俳優に田口刑事という役を演じた石山健二郎という人の演技が秀逸。一見強面の面構え、根は優しい人情味を持ったベテラン刑事という役柄をうまく演じて。他にも新聞記者役でちょっとだけ出演している千秋実、北村和夫、三井弘次等ベテランの俳優さんがちょい役で出ているところや魚市場の店員役で『事件記者』のアラさんこと清村耕次が出ていたことやあの有名なパート・カラーの煙りの元の火夫、藤原釜足の起用もクロサワ映画ならではの豪華キャスティング。勿論、三船敏郎、仲代達矢、志村喬、三橋達也といった黒澤映画常連組の個性も光って、一番衝撃的だったのはこの出演が実質的映画デビュー作となった山崎努でこれ以降『赤ひげ』『影武者』等で重要な演技者となっていくことを思うとこの作品で冷徹な犯人役を好演したことが大きな成長に繋がって。前半がどうやって身代金を渡すかそしてそれを受け取るかという興味でつなぎ、後半はその犯人をどうやったら追い込み捕まえるかという追跡劇で緊迫した画面を創り出した監督、脚本陣は流石。脚本はこれまでの黒澤作品に度々登場している菊島隆三、小国英雄、それに久板栄二郎、黒澤明が当たっており最強のシナリオ・グループと言えるのでは。尚、この映画を始め多くの文学作品の舞台を探訪検証するページ、「東京紅團」（上）、（中）、（下）に興味深い考察。