Neach’s One Phrase

ニーチ観察日記→ニーチ報告日記です。

「悪い奴ほどよく眠る 予告篇/黒澤明
いよいよビーチ・ボーイズのコンサートの日となり若干浮ついた気分に、このコーナーでのクロサワ・シリーズを一旦打ち止め。最後に紹介する作品は『悪い奴ほどよく眠る』という1960年公開の映画でこれは今回初めて鑑賞。
娯楽映画に徹していた黒澤作品では珍しい社会派サスペンスの巨編でかなり登場人物が入り組んで,その説明を結婚披露宴でのスピーチとそれを汚職絡みで取材する新聞記者のつぶやきで代行しているところから始まり。巨悪となる汚職事件で関係者が自殺や追い込まれていく中で土地開発公団の副総裁の秘書となって不正を暴こうとする主人公に三船敏郎が扮して。謹厳実直な秘書役を演じるには三船に付いた豪快で磊落なイメージが邪魔してしまって終始役柄に無理があるなと思って。むしろこの役は仲代達矢が演じた方がぴったりくるのに、どうして彼を使わなかったのかが疑問。後半、素性がばれて非情な最期を遂げるシーンもカット、三船という役者の個性が惨めな結末を寄せ付けていない感。三船と組んで巨悪と立ち向かおうとした板倉を演じた加藤武と公団課長の西村晃の熱演が光って。
また殺し屋役でちょっと登場するのが田中邦衛,役者に付いたイメージ(その後の『北の国から』の五郎役)が浮かんできてしまいちょっと滑稽な感じ。結局汚職事件に絡んで飛び降り自殺をした男の息子が公団への復讐を企て、筋書き通りに事は進行,最後は悪が勝つという展開は勧善懲悪の立場からするとやや不満の残る結末。秘書役の三船は非業の最期を遂げても構(わない)が、同時にその企んだ筋書き通りに汚職事件の全貌が公に曝されるという結末の方がフィクションとはいえ、すっきりしたのでは。