Neach’s One Phrase

ニーチ観察日記→ニーチ報告日記です。

「恋は紅いバラ/加山雄三とザ・ランチャーズ」
一昨日からある一冊の単行本を読んで。久し振りに読書の醍醐味を味わい、そこに書かれている内容、人物に多大な関心とリスペクトを感じながら最後のページを閉じ(た)。多少大袈裟に書き出した本とは最近宮治淳一さんが上梓した『MY LITTLE HOMETOWNー茅ヶ崎音楽物語』(ポプラ社・1,500円)という音楽エッセイ本。宮治淳一さんはneachの中では辻堂ブランディンのオーナーで稀代のレコード・コレクター、はたまたレコード会社にお勤めの音楽プロデューサーとして有益なコンピレーションを企画し、neachの店でも「出張ブランディン」という大変マニアックなアナログ・イベントをやっていただいている方という認識。業界色を感じさせない、身近な存在としてお付き合いさせていただいている方、その宮治さんがこの度、彼の音楽遍歴を茅ヶ崎という一地方都市に焦点を当てて辿った本。久し振りに興奮して一気に読んでしまったというのが偽らざる感想,
有名ミュージシャンとの交流やエピソード、それが茅ヶ崎を起点に展開、読み物としても優れたレポート,夢中で読んで。そもそも宮治さんとの出会いは宮本千賀ちゃんという友人から誘われて辻堂のブランディンという音楽カフェに出向いた時から知った著名人で、むしろアナログ・コレクター仲間といった気楽な気持でお付き合いさせていただいていたのですが、その実態がいろいろ分かってくると凄い人なのだな、と思える魅力いっぱいのお方でした。その一面気さくで肩の力の抜けた話しぶりや凄い人なのに全然そんなそぶりを見せない振舞いにいつしか旧知のように接しておりましたが、この本を読んで改めて「凄い人」という印象を強めました。その交流録の中に加山雄三桑田佳祐等の茅ヶ崎人脈が出てくることは想像、むしろその中にあって宮治淳一という人の得も知らぬ魅力というか、生い立ちの妙を感じ夢中で読了。こんな体験は久し振り、この興奮を鎮める意味でも多少読後感を書いてみたく。
加山さんをはじめ従兄弟に当たるミュージシャン、喜多嶋修(元ランチャーズ)、平尾昌晃、尾崎紀世彦等が挙って茅ヶ崎出身ということへの興味から何故そういったミュージシャンたちが茅ヶ崎に籍を置いたかといった謎を身近にいた体験から解説する記述が実に巧妙で宮治表現の特徴が。例えば第二章で加瀬邦彦を紹介する箇所で宮治さんはこんな表現で茅ヶ崎との縁を語って。<・・偶然のなせる業全てを「縁」という実に便利な日本語ですまそうとする。だが日々の生活で計画された以外の事象は全て偶然に過ぎない。偶然と「縁」とは次元が違う。私たちは偶然の世界に生きている。だが偶然がいつしか必然と思えるとき、それは「縁」に昇華する。・・>こんな表現で加瀬さんと茅ヶ崎の出会いを語り始め。先だって公開『茅ヶ崎物語』という映画でムービー・デビューされたかと思ったら、今度は優れた随筆家として、ますます彼の魅力が増幅され宮治ファンが増えることが予想、多分そんな評価を静かに笑って謙遜する宮治さんの笑顔が浮かび、この本はアーティスト紹介というより優れた地誌として長く後世に残る本。是非お手にとって読んでもらいたい一冊として恭しくご紹介。いやー、面白かった!