Neach’s One Phrase

ニーチ観察日記→ニーチ報告日記です。

先日やっと『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか増田俊也著を読み終え。700ページを越える大著だったからではなく、なかなか通して読む時間がとれなかったので一週間もかかって。読後感を書き留め。先ず何と言っても伝説の柔道家で最強の格闘技家との評価の高い木村政彦という人の人となりがよく書けていて面白かった。誰が最強かということはいろいろな所で取り沙汰される話題、その真偽よりは最強を目指す精神に興味を。「三倍努力」という言葉や「木村の前に木村なし、木村の後に木村なし」といった箴言が様々な関係者の証言などによってもっともらしく思え、実際に全盛期の木村選手の大外刈りや腕緘みなどと言った技を観てみたかった。例の力道山との試合もneachが4歳の時の出来事だったので記憶になく、YouTubeにアップされている映像で確認するしかない、あの映像も力道山側で編集されていて木村が急所蹴りをしたので力道山が怒って空手チョップを浴びせてノックアウト勝ちをしたという筋書きは怪しいかも。ただ木村側にも油断があっていつもは決死の覚悟で試合に臨んでいた木村選手があの時はやけにうきうきしていて闘争心に欠けていたと言わざるを得ない状況証拠。本のタイトルとなっている木村が力道山を付けねらって殺そうと思っていたという話しもあまり説得力を感じ(ず)。
一番関心を寄せた箇所は元々柔道は古流柔術という古武道でいろいろな流派があり、それが明治時代の頃から講道館と武徳会、それに高専柔道という派閥に分かれ、戦後は講道館の独占状態になるという流れ。それぞれにルールが違っており、今の講道館柔道は引き込みを禁じているので本当の柔道ではない、と著者は。他にも大山倍達の空手、植芝盛平合気道グレイシー一族の柔術力道山のプロレス、相撲、ボクシングに至るあらゆる格闘技の記述があって武道門外漢としては大変勉強に。ただ一つ難癖をつけるとすれば本のタイトル、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』というのは適切ではなかったように。何故ならそのことが主題でもないし、その回答も述べられていないから。ただ著者の並々ならぬ柔道への愛、ひいてはそのフィールドの最強の男、木村政彦に対する畏敬の念が随所に満ちあふれていて読み応えのある本。